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10月15日の火星
今年の天文現象でニュースになった話題のひとつに、2020年10月6日の火星最接近がありました。
今回の最接近は、準大接近といえるもので、次の最接近である2022年12月は今年の3/4位の大きさにしか見えません。
今年と同じ位の火星を楽しむには、2033年7月まで13年も待たなければならないのです。
そういった意味でも、今年は火星を観測する大事なチャンスと言えます。
(出典:国立天文台 天文情報センター)
残念ながら、最接近の頃は天気が悪く、火星を見ることが出来ませんでした。
そして晴天を待つこと5日、2020年10月11日に、そのチャンスが巡って来ました。しかし、シーイングが2/10位と悪く、テスト撮影ができたという感じでした。
次に晴天となったのは、10月15日でした。
この日は、シーイングは4/10位で標準以下でしたが、秋場の観測の中では良い方でした。満足が行く撮影ではありませんでしたが、何とか火星の模様をとらえることが出来ました。
月や惑星を見る時には、もちろん雲がないのが一番ですが、大気が安定していることも大変重要です。安定している日は、望遠鏡の倍率を思いっきり上げても、細かい所まではっきりと見えるものです。
デジカメとZWO ASI462MC
惑星は撮影対象として比較的暗くて小さいものになります。
このような対象では、動画や沢山の画像(数百枚以上)から、コンポジット(スタック)して滑らかにした画像を作り、それを画像処理していくのが主流になっています。
デジカメで普通にシャッターを切ると、大きな画面の中の本の小さい部分にしか惑星は写りません。大きく映すために拡大率を上げると、シャッタースピードを長くしなければならず、大気の揺らぎの影響を受けてしまいます。
これらの事を色々考えて、自分のミラーレス一眼でのベストな撮影方法を探っていたのですが、シーイングの良い日に1/100秒より早いシャッターを切らないと写りが悪いことが分かりました。
デジカメでは、拡大率・感度・ノイズなどの限界があることが分かったのです。
そこで、ZWO社のASI462MCというCMOSカメラを購入しました。下記画像の、赤いパーツがそのカメラです。
実際にデジカメと撮影してみると、20秒角の火星を撮影した時に、以下のような内容になります。
カメラ | 拡大レンズ(アイピース) | 火星の画像サイズ | シャッタースピード | 感度 |
Lumix DMC-GX8 | XP3.8mm | 155ピクセル | 1/50~1/100sec | ISO1600 |
ZWO ASI462MC | XP8mm | 260ピクセル | 1/500~1/1000sec | ゲイン460 |
この表から分かることは、ASI462MCの方がシャッタースピードがデジカメの1/10であり、その分シーイングの影響を受けにくいということです。
また、撮影した個々の画像(動画の一コマ)を見ると、デジカメで撮影した物よりノイズが少ない事もわかりました。
画像処理
このCMOSカメラを使って撮影した動画から、1枚の精細な画像を作って行きます。
まずは、動画を1枚の画像にスタック(重ね合わせ)して行きます。
これは、AutoStakker3.0というフリーソフトを使用します。
自分は、
① 動画は、約1200コマになるように撮影する。
②「Surface」にチェックを入れる。
③ 良いコマを30%でスタックすることが多い。
④ ポイントは多めに指定した方が、スタック後の画像が良いように感じる。
という感じでやっています。
このようなにしてスタックした画像は、粒状性が無くなって、かなり滑らかなものになっています。
ただ、まだぼんやりとしていますので、RegiStax6.0というフリーソフトを使ってウェーブレット変換という特殊処理をして、惑星の模様をより鮮明に浮き上がらせます。
このソフトをまだ十分に使いこなしていませんが、自分なりに処理してみたものが下の画像です。
上の方に白くて小さな極冠が見えます。下の方にも、極冠の端が細く広がって見えます。深緑色の模様が、濃淡を持って広がっています。
この時の火星は、中央経度がほぼ0度付近で、中央に「子午線の湾(アリンの爪)」が、その右側に「ペルシャの海」「真珠の海」が見えています。
もう少しシーイングが良ければ、この模様がシャープにより細かく出てくると思います。ただ、口径わずか8センチの望遠鏡で、これだけの火星の画像が撮影できるようになったのですから、技術の進歩は素晴らしいと思います。
Youtubeに動画もアップしました。こちらの方もどうぞ。
使用機材
鏡筒
ビクセン FL80S (8㎝フローライト屈折)
赤道儀
ビクセン スーパーポラリス
カメラ
ZWO ASI462MC
拡大レンズ(アイピース)
Pentax XP8mm